Mar 11, 2010

読書メモ:蝶の生態と観察

既知の情報を整理し、体形づけ、どこまでわかっているかを明示した、これからの日本の蝶学に欠かせない蝶研究者必携の書。
-中略-
本書は、時間や設備、文献など研究条件に恵まれない、一般のアマチュアや学生の蝶の生態研究、観察の指針となるようにまとめられた絶好のガイドブックである。 (築地書館Webサイトより)

上記のレビューにもある通り、蝶の生態についての既知の情報を整理・体系化した書であるが、「どこまでわかっているか」だけでなく「今後の課題は何か」という示唆に富んでいる。1988年発行だから22年も前の本なのだけれども、私の知識レベルでは今でも充分参考になる本だった。年に一度くらい読み返すと、新しいテーマが発見できそうな気がする。そうだな、Fieldworkに出る機会の少ない冬に、毎年読み返すことにしようか。

内容は非常に濃密なので、具体的な内容は紹介しづらいが、P147~150にまとめられた「蝶のすむ環境/草原と荒原」に関する記述は、以前紹介した富士山にすめなかった蝶たちの研究内容を整理したもので、「既知の情報を整理・体系化」の一端を垣間見ることができた。

また、私にとってとりあえず最も参考になりそうなのがこれ。

卵・幼虫・蛹の見つけ方

  1. 成虫の行動を見破ること
  2. 母蝶の目で好みの産卵部位を推定すること
  3. 食痕や巣に目がいくような訓練をすること
  4. ゆっくり歩き、しばしば立ちどまること
    (逆に、つまらないと思ったらどんどん急ぐこと)
  5. 時期、時刻を変えてチャレンジすること
  6. 固定観念を捨てること
  7. しらみつぶしに探すこと ※強調は引用者

これは、卵・幼虫・蛹の見つけ方であるけれども、強調した3つは成虫の生態撮影にもそもまま生かせそうだ。特に4.の「ゆっくり歩く」は私が苦手にしていることだ。せっかく良いポイントを見つけても、「先にもっと良いポイントがあるかも」と予定の行程を進むことを優先してしまい、後で後悔することが多い。その一方で「つまらない」ところでも時間をかけて歩いてしまうこともある。要するに「成虫の行動を見破れてない」ので、メリハリがつけられないのだ。自戒しなければ。

読書メモ:蝶のある生活

  • 蝶のある生活 (築地書館:1986年12月1日)
  • 浅田孝二/浅田玲子 共著

本書は珍しい蝶の生態、その美しさ、自然界の織りなす神秘的な本能にあやつられた蝶の物語をつづったものである。読者はきっとこの本の魅力を堪能し、蝶好きになり虫好きになることだろう。(序文より:北杜夫)

毎度のことですがこの本も新刊ではなく、初版発行は1986年12月1日です。23年前。昆虫関係の本を探して読んでいると、どうしても古い本に行き当たることが多くなってしまいます。

さて、「蝶のある生活」は浅田孝二/浅田玲子というご夫妻の共著です。このご夫妻、なんと夫婦揃っての虫屋さん。書中では、ご夫人の玲子さんが主に幼虫飼育、どちらかといえば野外活動がお好きなご主人の孝二氏は飼育に必要な食草・食樹確保という役割分担になっている様子が窺えます。いずれにせよ、お互いの趣味が一致しているのが非常に羨ましい。

ご主人の孝二氏の筆による「二人三脚の旅」という一篇にご夫婦の馴れ初めが書かれている。最初、ご夫人の玲子さんから孝二氏へのカラスアゲハの雌雄についての質問の書簡から始まったお二人は、手紙をやりとりしたり、時折電話で話したりしながら互いに面識のないまま満2年が経過した後、ようやく一緒に採集に歩いてみよう、となって初対面を果たす。そして初対面の採集行から帰宅した孝二氏は心の中でつぶやく。

「君たちのおかげで、いい人に会えたよ」
ひとわたり食草の世話が終わったとき、ぼくは幼虫たちを見渡しながら、心の中でつぶやいた。

そして半年後、お二人はご結婚された。

それから約半年後に、ぼくたちは結婚した。20歳を越える年齢差その他の障害より、共に蝶を育てる喜びを分かち合いたいという切望の方が強かった。

この一篇を読んだだけで、私はご主人の孝二氏に感情移入してしまい、ご夫人の玲子さんの姿が私の脳内で理想の女性と化してしまった。もちろん、書中にはご夫人の写真などは収められていない。すべて私の脳内妄想である。その脳内妄想の理想の女性が、書中あちこちで泣いたり、笑ったりしている。ある意味、この本はお二人のラブ・ストーリーであるようにも感じられた。

この本は、ゴイシシジミやコノハチョウを飼育や、飼育のための食草・食樹探しの苦労など、ご夫婦の蝶との関わりを綴った本であるけれども、すでに書いたとおりとても感情豊かな文章となっているので、蝶の趣味を持たない人でも興味深く読めるだろう。

Mar 02, 2010

いや、その情報は古いから。

ナガサキアゲハは地球温暖化によって生息域を日本南部から近畿まで北上させており、温暖化の象徴という。

いやいや、その情報は古すぎますって。 最近は関東北部まで分布域は拡がってますから~。 せっかく、「生息域を北上させている」ことまで書いてくれてるんだから、もう一歩踏み込んで確認して欲しかった。

とか言って、私も一昨年秋にその事実を知って驚愕したんですけどね。なにしろ、私が昆虫採集を趣味にしていた20数年前は、ナガサキアゲハといえば九州以南の蝶でしたから。

昨年は、県内・都内で何度か実物も目にする機会がありました。但し、写真には撮れず終いでしたので、今年こそ撮影に成功したいところです。