Apr 28, 2009
Apr 27, 2009
読書メモ:世界経済同時危機〜グローバル不況の実態と行方
旧Ganesha's monologue(by P_BLOG)より移転転記。(2009-12-13)

- 世界経済同時危機 〜グローバル不況の実態と行方
- 原田泰+大和総研
- 日本経済新聞社
- 2009年2月刊
池田信夫Blogの書評に触発されて読んでみた。
本書では、まず第1章でサブプライム・ローン危機に端を発した今回の金融危機が全世界に波及していく過程を簡単に説明している。次に第2章では過去の金融危機の経験について分析を行っている。そして第3章以降ではアメリカ、ヨーロッパ、中国、その他の新興国、日本の順に、今回の金融危機からの回復過程について地域別に展望している。
その結論は、引用だと長くなるので要旨をまとめると、次の通りになるだろう。
- 危機の原因は「誤った金融政策(ITバブル後の金融緩和を長く続けすぎた)」「誤った金融規制(実質的にリスク遮断が出来ていないSIV資産の銀行資産からの切り離し・景気変動増幅的なBIS自己資本規制)」「誤ったインセンティブ・システム(格付けの歪んだインセンティブ・略奪的貸出・金融機関経営者のモラル・ハザード)」にある。(第1章)
- 危機からの脱出には金融緩和が必要。財政拡大は必要ない。(第2章)
- 充分に金融緩和を行えば、09年はマイナス成長だが2010年にはプラス成長に戻る。(第2章)
- 但し、危機以前に世界経済を牽引してきたアメリカの消費需要の縮小は危機が終わっても続くので、アメリカ向け輸出依存度の高い日本経済は内需主導型に転換する必要がある。(第7章)
- そのためには、不完全で不公平であろうと、資本主義のゲームによる富の分配によって、日本経済をより効率的にすることが必要だ。(第7章)
読了感としては、次の通り。
まず第1章の今回の金融危機のメカニズムに関する説明は、簡潔にまとまっていて分かりやすい。ただ、簡潔すぎるくらいなので、そのあたりの理論的な解説については、他の本も読んで補完した方が良さそうだ。
次に、日本では内需転換と富の分配の効率化が必要なのは解った。が、肝心なその具体策に乏しいのが消化不良だ。一応、「中古住宅市場の活性化(住宅の貯蓄化)」とか「地方公務員の賃金を下げて有能な人材をビジネスや技術開発に開放しろ」などの提言が載っているが、それだけで足りるとは思えない。もし、それくらいしか出来ることが無いのなら、これまで外需頼みだった日本は最悪の危機からは脱出できたとしても、長期停滞は避けられないそうにない。
また、第2章で「過去の金融危機では○年で回復したから、今度も来年にはプラス成長に戻る」というロジックが見られるが、あまり根拠として説得力があるように思えない。むしろ、バブル崩壊後の日本では政策の失敗で「失われた10年」を経験するはめになったこと、今度の補正予算(バラマキ財政政策)連連の記事を見ても、日本だけ政策のピントが外れてるようにしか思えない。日本以外は本書の言うとおり来年プラス成長に戻れるかもしれないが、日本だけまたダメなのじゃないのだろうか。じつに心配だ。
池田信夫Blogの書評について
池田信夫Blogの書評にまとめられていた「本書の結論」については、大筋では間違っていないと思うが、細部が微妙にズレているのではないかと感じた。
たとえば、池田信夫Blogの書評では、危機の原因として「グローバル・インバランス」に焦点を当てている。もちろん、本書の中にもグローバル・インバランスについて触れられているが、それは危機を増幅した背景としての言及で、危機の本質的な原因としてはいないように思われた。
また、「地方公務員の給与」問題についても、本書ではもっと広い意味での「富の分配の効率化が必要」という文脈の中で非効率性の一例として取り上げているだけなので、この部分を取り出して「結論だ!」とするとちょっと違和感を感じてしまう。
但し、それらは間違いというより、書評を読む人たちに分かりやすく書こうとしているだけなのだろう。
一方、田中秀臣氏がEconomics Lovers Liveにおいて池田信夫Blogの書評を批判し、「グローバル・インバランスが危機の原因の説明としては正しくない、というのが原田さんの主張」と書いているが、それはどうだろうか。思うに、田中秀臣氏は本書の「日本の低金利政策がバブルと金融危機の原因だ、とするのは誤りだ」という部分と、グローバル・インバランスの問題を同一視しているのだ。実際には、本書ではこの両者は区別されており、「途上国の貯蓄過剰がもたらしたグローバル・インバランスがアメリカの低金利を生み出した」と、危機を増幅した背景として言及されている。(但し、危機の本質的な原因とはしていないので、その意味では合ってると言えば合っている。でも、田中氏はその意味で批判しているわけではないよね)
Apr 08, 2009
三ツ池公園の桜
旧Ganesha's monologue(by P_BLOG)より移転転記。(2009-12-13)
午後からは、三ツ池公園へ桜を見に出かけました。ちょっと盛りを過ぎちゃったかな〜、という感じではありましたが、充分に見応えのある桜が拝めました。ところが、写真に撮ろうとしても良い感じに撮れない。せっかくの青空なので空の色と桜の色を両立させたいのですが、それはどうやら無理。青空の色を出すと桜の花は真っ白だし、桜のほのかなピンク色を出すと空の方が真っ白だ。こんな時、ワイドダイナミックレンジを売り物にした今春の注目コンパクトデジカメ、FUJIFILM FinePix F200EXRやRICOH CX1だと両方のいいとこ撮りが出来るんだろうな、と思う。
<三ツ池公園の桜>
撮影日:2009/04/08
撮影場所:横浜市鶴見区 三ツ池公園
画像サイズ:320×427
撮影機器:RICOH R8
(↑)気に入らないからといって、1枚も載せないのはどうかと思うので載せてみる。わざと逆光で水面の反射を入れてみたもの。但し、空の色は見事に白トビしている。
<桜の花のアップ>
撮影日:2009/04/08
撮影場所:横浜市鶴見区 三ツ池公園
画像サイズ:320×320
撮影機器:RICOH R8
(↑)桜の花のアップをマクロモードで撮影。こっちは割とまともに撮れていると思う。
<ベニシジミ>
撮影日:2009/04/08
撮影場所:横浜市鶴見区 三ツ池公園
画像サイズ:320×240
撮影機器:RICOH R8
(↑)ちょっと翅が傷んでいるけど、ベニシジミが居たのでパチリ。
<シジュウカラ>
撮影日:2009/04/08
撮影場所:横浜市鶴見区三ッ池公園
画像サイズ:320×240(トリミング)
撮影機器:RICOH R8
(↑)シジュウカラも居た。
また、20年前の本かよ、と思いつつご紹介。
本書は富士山およびその周辺地域におけるアマチュア研究家による調査・研究の産物だ。「アマチュア研究家でもここまでできるのか」というのが本書を読んだ素直な感想だった。
本書のタイトルになった「富士山にすめなかった蝶たち」という章も面白かったが、どちらかというと、個人的には「川原は蝶のふるさと」という章の方が面白かった。その章では、草原性蝶類の分布の変遷についてP.98〜P.103に「草原の蝶のたどった道」としてまとめられているのだが、その結論に至る著者の思考過程・調査過程が追体験的に記述されていて非常に興味深かったのだ。
「川原」の重要性に着目した著者は、「川原」の環境をさらに細分化して調査・研究を進めていく。
ところが、この分類だけでは説明できない現象があった。川の傾き(勾配)によって「礫質の川原」と「泥質の川原」が存在するのだ。
川原の調査が一段落した著者は次に海岸に着目し、調査を開始する。本来の川原の環境は大部分が不安定な破壊自然草原であるから、人為破壊草原とはいっても遅延草原的な性格を持つ「堤防上のシバ型草地」に生息し、移動性にも乏しいヤマトシジミ、シルビアシジミなどの出自を「川原」に求めるのが困難だったからだ。
このように、著者の思考過程と調査過程が追体験的に記述されているので、自然に「調査・研究とはこのように進めるのか」というものがよく解る。同時に、このBlogで昨秋から続けているアカボシゴマダラの越冬幼虫の観察記録が、いかに幼稚であるか(まるで子どもの観察日記)という点も考えさせられた。それにしても、地味で根気の要る調査を長年にわたって続けてこられた著者には本当に頭が下がる。