物欲日記と備忘録
旧Ganesha's monologue(by P_BLOG)より移転転記。(2009-12-13)
池田信夫Blogの書評に触発されて読んでみた。
本書では、まず第1章でサブプライム・ローン危機に端を発した今回の金融危機が全世界に波及していく過程を簡単に説明している。次に第2章では過去の金融危機の経験について分析を行っている。そして第3章以降ではアメリカ、ヨーロッパ、中国、その他の新興国、日本の順に、今回の金融危機からの回復過程について地域別に展望している。
その結論は、引用だと長くなるので要旨をまとめると、次の通りになるだろう。
読了感としては、次の通り。
まず第1章の今回の金融危機のメカニズムに関する説明は、簡潔にまとまっていて分かりやすい。ただ、簡潔すぎるくらいなので、そのあたりの理論的な解説については、他の本も読んで補完した方が良さそうだ。
次に、日本では内需転換と富の分配の効率化が必要なのは解った。が、肝心なその具体策に乏しいのが消化不良だ。一応、「中古住宅市場の活性化(住宅の貯蓄化)」とか「地方公務員の賃金を下げて有能な人材をビジネスや技術開発に開放しろ」などの提言が載っているが、それだけで足りるとは思えない。もし、それくらいしか出来ることが無いのなら、これまで外需頼みだった日本は最悪の危機からは脱出できたとしても、長期停滞は避けられないそうにない。
また、第2章で「過去の金融危機では○年で回復したから、今度も来年にはプラス成長に戻る」というロジックが見られるが、あまり根拠として説得力があるように思えない。むしろ、バブル崩壊後の日本では政策の失敗で「失われた10年」を経験するはめになったこと、今度の補正予算(バラマキ財政政策)連連の記事を見ても、日本だけ政策のピントが外れてるようにしか思えない。日本以外は本書の言うとおり来年プラス成長に戻れるかもしれないが、日本だけまたダメなのじゃないのだろうか。じつに心配だ。
池田信夫Blogの書評にまとめられていた「本書の結論」については、大筋では間違っていないと思うが、細部が微妙にズレているのではないかと感じた。
たとえば、池田信夫Blogの書評では、危機の原因として「グローバル・インバランス」に焦点を当てている。もちろん、本書の中にもグローバル・インバランスについて触れられているが、それは危機を増幅した背景としての言及で、危機の本質的な原因としてはいないように思われた。 また、「地方公務員の給与」問題についても、本書ではもっと広い意味での「富の分配の効率化が必要」という文脈の中で非効率性の一例として取り上げているだけなので、この部分を取り出して「結論だ!」とするとちょっと違和感を感じてしまう。 但し、それらは間違いというより、書評を読む人たちに分かりやすく書こうとしているだけなのだろう。
一方、田中秀臣氏がEconomics Lovers Liveにおいて池田信夫Blogの書評を批判し、「グローバル・インバランスが危機の原因の説明としては正しくない、というのが原田さんの主張」と書いているが、それはどうだろうか。思うに、田中秀臣氏は本書の「日本の低金利政策がバブルと金融危機の原因だ、とするのは誤りだ」という部分と、グローバル・インバランスの問題を同一視しているのだ。実際には、本書ではこの両者は区別されており、「途上国の貯蓄過剰がもたらしたグローバル・インバランスがアメリカの低金利を生み出した」と、危機を増幅した背景として言及されている。(但し、危機の本質的な原因とはしていないので、その意味では合ってると言えば合っている。でも、田中氏はその意味で批判しているわけではないよね)
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池田信夫Blogの書評に触発されて読んでみた。
本書では、まず第1章でサブプライム・ローン危機に端を発した今回の金融危機が全世界に波及していく過程を簡単に説明している。次に第2章では過去の金融危機の経験について分析を行っている。そして第3章以降ではアメリカ、ヨーロッパ、中国、その他の新興国、日本の順に、今回の金融危機からの回復過程について地域別に展望している。
その結論は、引用だと長くなるので要旨をまとめると、次の通りになるだろう。
読了感としては、次の通り。
まず第1章の今回の金融危機のメカニズムに関する説明は、簡潔にまとまっていて分かりやすい。ただ、簡潔すぎるくらいなので、そのあたりの理論的な解説については、他の本も読んで補完した方が良さそうだ。
次に、日本では内需転換と富の分配の効率化が必要なのは解った。が、肝心なその具体策に乏しいのが消化不良だ。一応、「中古住宅市場の活性化(住宅の貯蓄化)」とか「地方公務員の賃金を下げて有能な人材をビジネスや技術開発に開放しろ」などの提言が載っているが、それだけで足りるとは思えない。もし、それくらいしか出来ることが無いのなら、これまで外需頼みだった日本は最悪の危機からは脱出できたとしても、長期停滞は避けられないそうにない。
また、第2章で「過去の金融危機では○年で回復したから、今度も来年にはプラス成長に戻る」というロジックが見られるが、あまり根拠として説得力があるように思えない。むしろ、バブル崩壊後の日本では政策の失敗で「失われた10年」を経験するはめになったこと、今度の補正予算(バラマキ財政政策)連連の記事を見ても、日本だけ政策のピントが外れてるようにしか思えない。日本以外は本書の言うとおり来年プラス成長に戻れるかもしれないが、日本だけまたダメなのじゃないのだろうか。じつに心配だ。
池田信夫Blogの書評について
池田信夫Blogの書評にまとめられていた「本書の結論」については、大筋では間違っていないと思うが、細部が微妙にズレているのではないかと感じた。
たとえば、池田信夫Blogの書評では、危機の原因として「グローバル・インバランス」に焦点を当てている。もちろん、本書の中にもグローバル・インバランスについて触れられているが、それは危機を増幅した背景としての言及で、危機の本質的な原因としてはいないように思われた。
また、「地方公務員の給与」問題についても、本書ではもっと広い意味での「富の分配の効率化が必要」という文脈の中で非効率性の一例として取り上げているだけなので、この部分を取り出して「結論だ!」とするとちょっと違和感を感じてしまう。
但し、それらは間違いというより、書評を読む人たちに分かりやすく書こうとしているだけなのだろう。
一方、田中秀臣氏がEconomics Lovers Liveにおいて池田信夫Blogの書評を批判し、「グローバル・インバランスが危機の原因の説明としては正しくない、というのが原田さんの主張」と書いているが、それはどうだろうか。思うに、田中秀臣氏は本書の「日本の低金利政策がバブルと金融危機の原因だ、とするのは誤りだ」という部分と、グローバル・インバランスの問題を同一視しているのだ。実際には、本書ではこの両者は区別されており、「途上国の貯蓄過剰がもたらしたグローバル・インバランスがアメリカの低金利を生み出した」と、危機を増幅した背景として言及されている。(但し、危機の本質的な原因とはしていないので、その意味では合ってると言えば合っている。でも、田中氏はその意味で批判しているわけではないよね)